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2018.08.20

「この書面は有効ですか」というご質問について

冒頭から質問です。AさんがBさんに100万円を貸付けしました。2人は返済に関する約束をし、その内容を次のような形で残しました。

さて、「有効」なのはどこまでだと思いますか。

① 弁護士に作成してもらった契約書にそれぞれ実印を押し、印鑑証明書を添付した

② 公証人に公正証書を作成してもらった

③ Aさんは、インターネットでそれらしき文案を見付けてきて、それを書き写した。双方の名前と日付はPCで打ち込んでおき、1部をBさんに渡した。なお、両名とも署名押印はしていない。

④ 文案はそれなりに出来上がっていたが、その場できちんとした用紙が無かったため、新聞の折り込みチラシの裏に内容を書いた。双方が署名して認め印を押した。

⑤ 時間が無かったので、喫茶店の紙ナプキンに、借りたBさんが条件などを書いてAさんに渡した。Bさんの署名押印はあるが、Aさんの署名押印はない。

⑥ 時間もなくBさんは面倒くさがりだったので、しょうがなくAさんが紙ナプキンに条件を書いてBさんにわたした。双方署名、押印はない。

「有効」の意味?

 「有効」という言葉をカギ括弧でくくったのには訳があります。

 果たして、「有効」とはどういう意味で使われているのでしょうか。よく考えてみると、曖昧です。

 ”秦弁護士、この書面は「有効」ですか?”という質問を受けることが、ままあります。そういう場合、多くの人は、

”ここに書いている内容で契約(などの合意)は成立していますか?”

という意味で聞いていることがほとんどです。もし、こういう意味で聞いているのだとしたら、秦の答えは、

”はい、成立しています”

となります。それは、①~⑥、どれでも答えは変わりません。

なぜなら、契約(などの合意)は、書面など無くても成立するからです。

3 その書面は「証拠」として「有効」(証拠として役立つ)か?

 しかし皆さん、最初の質問をみて、③あたりから不安になってきませんでしたか。果たしてこれは「有効」なのか、と。

 その違和感は常識的なものでおかしくはありません。不安に思って当然です。

 

 その不安は、その書面が、合意したことを証明する「証拠」として役立つか、ということに対する不安です。

 

 その「書面」が役立つのかどうか、つまり「有効」なのか。「有効」をそういう意味で捉え直し、先の①~⑥を改めて見てみると、先ほどの回答は少々結論が変わります。

 法律上、押印は極めて重要な意味を持ちます。その印鑑が本人のものである場合、その文書は本人が作成したものと考えてよいことになっています。これに従うと、④は双方の署名押印があるので、立派な証拠となり得ます。他方、署名押印の無い③は証拠としての力が④に比べ段違いに見劣りします。

 ⑤はどうでしょうか。少なくとも、借り手であるBさんが条件を認めたことは証明できそうです。③よりも全然良いと思います。結局、③は⑥と同じ程度の有効性しかない、と言って良いでしょう。


 ①②は言わずもがな「有効」です。なお、印鑑証明書を添付して実印を添付するのは、本人の印鑑が押されたことが確実になりますので、認め印を押すよりも「有効」です。

4 結局、書面を残すというのは、合意の内容について争いが無いように、「証拠」として使えるように足跡をのこしておく行為に他なりません。合意の内容を明確にしつつ、相手が合意の内容を認めたという証拠を残す、これが基本です。そういう意味では、⑤は最低限の基本をおさえている内容です。

 相手が合意の内容を認めた、ということを残すには、押印だけが手段ではありません。押印してもらえない場合には、例えばメールやFAXで送っておいて、OKの返信をもらうなどの方法もあります。とにかく、相手が了承した、という点について客観的なものを残しておくのが重要です。

 

 

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